鰻に近づいた夜

article

仕事が終わってもムカムカがどうにも収まらず、心穏やかでないまま帰路に着く。

この帰り道に読もうと楽しみにしていた『違国日記』の四巻を開く気分にもなれず、だらだらとスマホを眺めて電車に乗っていると、ちょうど閉まったばかりのドア上に最寄駅の名前が見える。これはどっちだ、と迷う間も無くその名前は続く駅の名前へと変わり、僕は電車を乗り過ごしたのであった。

間違った電車に乗ってしまうことは多々あれど、乗り過ごすことなんてほとんどなかったからひどく落ち込む。いっそのこと次の駅で晩飯でも食べてお酒でも飲んでやろうかと思うが、そんなささやかな決意を決め込むテンションにもなれず、早く家に帰りたい思いだけが湧き上がってくるので引き返すことにする。

最寄駅に着き、どうやってこの穏やかならざる心を癒そうかと考えていると、駅前の鰻屋が目に入る。夕飯に三千円くらい使ってしまえば全部がどうでも良くなるかしらと妄想し、その暖簾前までゆっくりと歩くが、結局その勇気も出せずに帰路につき、適当にパスタを作ってお腹を満たす。

気分が上がらない時に何をすれば良いのかわからない。ただ、ここ数年で一番鰻に近づいた夜だった。

article
ランダム記事
半端だった仕事のいくつかに蹴りをつけることができた。しかし査読から帰ってきた論文を直さなければならず、あまり爽快感はない。あと十日ほど。土日が二回ずつあるし、休みも取るからなんとかしたい。 NHKでやってたサザンのライブに見入ってしまった。どうしてあんなに桑田佳祐は人を惹きつけるのだろう。 サイトに関わっているのはもちろん僕一人なのに、複数人を巻き込んでやる場合の運用システムもどきをnotionで作っていた。まあシステムと呼べるほどのものではないが。友人とかにも記事を書いてもらいたい。なんというか、人文学はもっと軽くなってほしい。曖昧なことばかり考えている。多分疲れている。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

コメント

タイトルとURLをコピーしました