部屋は隙間だらけ

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長い間眠ったがゆえの疲労感とともに目を覚ますと、近くから人の声が聞こえてくる。同じ建物の別の階から届いているような具合で、それはちょうど実家の二階から一階で話している家族の声を聞いているような感じだ。

生暖かい空気の中で、ぼんやりと色々なことを思い出す。そういえばもう暑くなってきたということで、窓を開けて寝たのだった。よく聞いてみると、声はアパートの前を通り過ぎる若い家族連れの声だ。

休日であることの特権を大いに行使し、ベッドの上で途方もなく無益な時間を享受した後、ようやく身体を起こし、カーテンを開けると、網戸のこちら側にカメムシがとまっていた。

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ほんのり二日酔い気味で、しょっぱい汁物が食べたい。 ということで、昼休みに職場近くのラーメン屋に行く。濃厚ラーメンみたいな気分ではないので、ぱっと見ですっきりとした醤油ラーメンのありそうなお店を探すと、集来というお店に心を惹かれる。 ビルの一階、ちょっと奥まった場所に位置するそのお店は、一時少し前に向かうと、四、五人の列ができている。まあラーメン屋だからすぐに入れるだろうと思って並ぶと、十分くらいで店内に案内される。 頼んだのは手打ち麺のサンマーメン。存在こそ知っていたが、実際に食べたことはない。頼む際に「あれ、サンラーメン」だっけと疑い、店員の顔色を窺って自分の発言が正しかったのかを確かめてみるが、怪訝な表情を浮かべることもない。多分合っているだろうと思って再度お品書きを見返すと、やはりサンマーメンで合っている。よかった。しかしこれはどういう意味なのだろう。 五分くらいで着丼。キャベツ、もやし、ヤングコーンなどの野菜あんがたっぷりと乗ったその見た目は、まるで二郎系ラーメンであるかのようだ。しかも手打ちの麺はもちもちと縮れた太麺だ。 スープを一口啜ってみると、さっぱりとした醤油味。水分塩分を欠いた身体に染み渡る優しい塩味に、熱々のあんかけが美味しい。やはり二郎系などではない。スープをしっかり吸った太麺は、噛むたびに麦の甘さがふわっと鼻を抜けていく。 しかし何よりこのラーメン、野菜と麺の比率がおかしい。野菜七、麺三くらいの感じ。野菜を口いっぱいに頬張ると、ついでにちょっと麺がついてくるような感じだ。 小さい頃はラーメンでも焼きそばでも、麺だけあれば具材なんてあってもなくても変わらないと思っていたのに、ここ数年で具材こそが麺類の真骨頂だと思えるようになってきた。そんな自分の変化がそのまま可視化されたようなこのラーメンを食べ終えると、お腹がいっぱいで眠くなってしまう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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