牡蠣ばっか食いやがって

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家探しに、朝から不動産屋に向かう。土砂降りの中最寄り駅まで歩き、無意味に寝不足な僕の足はぐしょぐしょになり凍えてしまう。

思い切って部屋を決めた。家賃とか間取りとか部屋の綺麗さとかみたいな、部屋決めの解像度が最低レベルの人の基準だとほとんど同じに見える部屋が最終候補に残った。だから「えいや!」で決めた。本当に「えいや!」と口に出すとこだった。ちなみにこの「えいや!」を気軽に振りまくのが人生の目標。

半年ぶりの一人暮らしだ! と歓喜に踊り散らかしたが、初期費用が結構かかることを知り、一気にテンションが下がる。それに半年前も実家じゃなかっただけで、一人暮らしじゃなかった。

実家暮らしのくせに、些細な散財を繰り返す低賃金労働者である僕の貯金は、どうやらこの引っ越しでからっからに尽き果ててしまうらしい。まあここ数年月末残高が一万円を超えた記憶のない僕からすると、その方が自分らしくて良い気もする。そんなので良いわけがない。

それなのに不動産屋を出て、近くのラーメン屋に入り、一番高い牡蠣ラーメンを替え玉セットで食べてしまう。昨日の昼ごはんも牡蠣だったのに。バランス感覚をひどく欠いている(しかも家に帰ると夕飯はカキフライだった)。

その後は知らない街のブックオフをぶらぶら。ずっと前から読みたかったミハル・アイヴァスというチェコの作家の『黄金時代』という本が安くで売っていて、書棚とレジを何度も往復する。

いつもなら間違いなく買っていたのだけど、あと一二週間で一文なしになることを運命づけられた僕は、その本をそっと棚に戻し店を出る。大人になった。積読いっぱいあるから良いもんね! と己を説得するも、しかしたかだか1000円の本を買うのに躊躇するなんて、やはり貧乏すぎる、と悲しい気持ちになる。金稼ぎをしなければならないという思いを、齢26にしてとうとう抱く。


リップクリームがなくなりまくって腹が立つ。一度使うとしばらく姿を消す。新しいの買ったら古いのが出てきて、2回くらい使ったら両方とも失踪。なんなんだこいつら。


帰りに寄ったタリーズで、色々と制作について考えた。それをまとめるために、仕事ではあんなに毛嫌いしていたPower Pointを使う。仕事でなければ、パワポだって使いこなしてしまうのだ。

まあ大したことを言っているわけではない。結構素朴なことだと思う。大雑把に言えば、

制度的な作業=作品を「完成」に近づけていく作業は、その前段階で無秩序的に湧き出てきたアイデアを捨てさり、ある種の秩序を引き込もうとすること。それは必要な過程だけれど、個人でひっそりと制作を行なっていると、いつの間にかそこでの整理整頓が過度に神経質なものになっていくことがある。そんで気がついた時には当初の企画の良さが失われていて。

という問題に対する解決策。とりあえず現時点でのものなので、今後じっくり煮詰めていく。

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つい数日前に夢を思い出せなくてウンタラカンタラと日記に書いたが、今日見た夢はかなり鮮明に覚えている。 僕は京都にやってきた旅行者。夜の木屋町で自転車を漕ぎながら夕飯を食べる店を探している。一通り飲食店を回ってみて何軒か候補をリストアップするものの、結局決めきれずに検索に頼る。するとその中の一軒であった安価なラーメン屋が飛び抜けて高い評価を受けていることを知り、そこを訪れることに決める。 そこは中華料理屋風に漢字二文字で名付けられたお店だ。路地裏で営業しているのだが、入り口となる扉はなく、店全体がテラス席のように外に開かれている。妖しげな赤や青の照明が至る所に置かれていて、異国情緒漂う雰囲気は『千と千尋の神隠し』で千尋の両親が豚に変わったあの屋台に似ている。 中にいる客は少なく、皆一人で丼を睨みつけて黙って箸を動かしている。どうやらわんこそばのようなスタイルらしく、ふと目についた男の席には何十個もの空いた丼が並んでいる。しかもその皿はどれも大きい。普通のラーメン一人前くらいの量を、男は全て平らげたらしい。 店員の男(容貌はどうも思い出せない)に案内されて、奥の方の席に案内される。メニューが見当たらずあたふたしていると、再び店員がやってきて「うちはメニューが一つなんですよ」と言う。「うちはね、乾麺のお店なんです。だからこんなに安く提供できる」 彼はそう言って壁面に貼られた紙を指さすと、そこにはコピー用紙に青のマジックインキ「30分500円」との文字が書かれている。 「麺は適宜補充しますから安心してください」男はそう言うと、ぐつぐつと煮えた大きな鍋が見える厨房へと姿を消す。 しばらく待っていると、つけ汁と麺が運ばれてきた。簀の上に乱雑に並んだやけに太いその麺は奇妙なほど角ばっている。普通の麺が円柱だとするならば、この麺は角柱と言ってよい。それに長さもまばらだ。小指ほどもない麺がある一方、始点も終点もわからないほど長い麺も混じっている。高野豆腐みたいに皺だらけであることも気になる。 一見したところつけ汁はオーソドックスなもので、適度な酸味と獣感が感じられるその匂いは食欲をそそる。まあとにかくお腹も減っているので、とにかく麺を口に運ぶことにする。 美味しくない。 嫌悪すべきまずさ、というほどでもないが、やはりあまり美味しくない。カップヌードルの麺の悪いところを増大させたような味で、一度乾燥させたことで生じる雑味が強調されている。太さの割にやけにスカスカな印象をもたらすその麺は、食べても食べてもお腹に溜まっていかないような感覚がある。 とはいえお腹が減っているので、勢いのまま一皿目を食べ終える。最後の一口を咀嚼し終えた瞬間、音も立てずに男がやってきて、黙って新しい麺の入った丼を置いて去っていく。 これが30分も続くのか。僕は憂鬱な気持ちになってその麺に目を向ける。麺量は一皿目よりも増えている。 ここで目が覚めた。今日は麺類を口にせず、白米を食べることにしよう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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