走馬灯の気分は伝染する

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夕飯も風呂も歯磨きも全て終えてあとは寝るだけの状況を作ってベッドの上で寝転んで本を読んでいると、台所上に設置された蛍光灯がつけっぱなしになっていることに気がつく。こういうところから節約の意識を高めていかなければならないと思うが、珍しくもせっかく読書に集中できているので立ち上がる気が起こらない。

しかしそのことに気がついてしまったが最後、文章を追う僕の目は滑るばかり。こうも簡単に集中が途切れてしまう僕の散漫癖に辟易としながらも、とはいえ横臥の姿勢を崩すのはやはり面倒で、ついつい手元にあるスマホをいじってしまう。

こうなってしまったら読書は諦めて眠りにつくのが一番だが、とはいえ立ち上がって電気を消す必要がある。とりあえずスマホを充電ケーブルに差し込み、目覚ましをセットする。白々しく光る蛍光灯のをじっと眺めやりながら、ありもしない尿意を捏造して立ち上がる理由を拵える。

今まで散々電気を無駄遣いしてきたなと思う。今みたいに「立ち上がるのがめんどくさい」ならまだわかるが、ひどい時には「紐に手を伸ばすのがめんどくさい」という理由で何時間も明かりを消さなかったこともある。怠慢な自分を変えていくには、日常生活の些細な細部を決別の儀式とみなして行動するほかないだろう。

そんなことをだらだらと考えていると、鈍いうめき声のような音が聞こえてくる。音はただちに水滴がポトリと落ちるような可愛らしい響きへと変わり、その小気味良いリズムに導かれて向けられた視線の先で、蛍光灯が点滅していた。

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つい数日前に夢を思い出せなくてウンタラカンタラと日記に書いたが、今日見た夢はかなり鮮明に覚えている。 僕は京都にやってきた旅行者。夜の木屋町で自転車を漕ぎながら夕飯を食べる店を探している。一通り飲食店を回ってみて何軒か候補をリストアップするものの、結局決めきれずに検索に頼る。するとその中の一軒であった安価なラーメン屋が飛び抜けて高い評価を受けていることを知り、そこを訪れることに決める。 そこは中華料理屋風に漢字二文字で名付けられたお店だ。路地裏で営業しているのだが、入り口となる扉はなく、店全体がテラス席のように外に開かれている。妖しげな赤や青の照明が至る所に置かれていて、異国情緒漂う雰囲気は『千と千尋の神隠し』で千尋の両親が豚に変わったあの屋台に似ている。 中にいる客は少なく、皆一人で丼を睨みつけて黙って箸を動かしている。どうやらわんこそばのようなスタイルらしく、ふと目についた男の席には何十個もの空いた丼が並んでいる。しかもその皿はどれも大きい。普通のラーメン一人前くらいの量を、男は全て平らげたらしい。 店員の男(容貌はどうも思い出せない)に案内されて、奥の方の席に案内される。メニューが見当たらずあたふたしていると、再び店員がやってきて「うちはメニューが一つなんですよ」と言う。「うちはね、乾麺のお店なんです。だからこんなに安く提供できる」 彼はそう言って壁面に貼られた紙を指さすと、そこにはコピー用紙に青のマジックインキ「30分500円」との文字が書かれている。 「麺は適宜補充しますから安心してください」男はそう言うと、ぐつぐつと煮えた大きな鍋が見える厨房へと姿を消す。 しばらく待っていると、つけ汁と麺が運ばれてきた。簀の上に乱雑に並んだやけに太いその麺は奇妙なほど角ばっている。普通の麺が円柱だとするならば、この麺は角柱と言ってよい。それに長さもまばらだ。小指ほどもない麺がある一方、始点も終点もわからないほど長い麺も混じっている。高野豆腐みたいに皺だらけであることも気になる。 一見したところつけ汁はオーソドックスなもので、適度な酸味と獣感が感じられるその匂いは食欲をそそる。まあとにかくお腹も減っているので、とにかく麺を口に運ぶことにする。 美味しくない。 嫌悪すべきまずさ、というほどでもないが、やはりあまり美味しくない。カップヌードルの麺の悪いところを増大させたような味で、一度乾燥させたことで生じる雑味が強調されている。太さの割にやけにスカスカな印象をもたらすその麺は、食べても食べてもお腹に溜まっていかないような感覚がある。 とはいえお腹が減っているので、勢いのまま一皿目を食べ終える。最後の一口を咀嚼し終えた瞬間、音も立てずに男がやってきて、黙って新しい麺の入った丼を置いて去っていく。 これが30分も続くのか。僕は憂鬱な気持ちになってその麺に目を向ける。麺量は一皿目よりも増えている。 ここで目が覚めた。今日は麺類を口にせず、白米を食べることにしよう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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