走馬灯の気分は伝染する

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夕飯も風呂も歯磨きも全て終えてあとは寝るだけの状況を作ってベッドの上で寝転んで本を読んでいると、台所上に設置された蛍光灯がつけっぱなしになっていることに気がつく。こういうところから節約の意識を高めていかなければならないと思うが、珍しくもせっかく読書に集中できているので立ち上がる気が起こらない。

しかしそのことに気がついてしまったが最後、文章を追う僕の目は滑るばかり。こうも簡単に集中が途切れてしまう僕の散漫癖に辟易としながらも、とはいえ横臥の姿勢を崩すのはやはり面倒で、ついつい手元にあるスマホをいじってしまう。

こうなってしまったら読書は諦めて眠りにつくのが一番だが、とはいえ立ち上がって電気を消す必要がある。とりあえずスマホを充電ケーブルに差し込み、目覚ましをセットする。白々しく光る蛍光灯のをじっと眺めやりながら、ありもしない尿意を捏造して立ち上がる理由を拵える。

今まで散々電気を無駄遣いしてきたなと思う。今みたいに「立ち上がるのがめんどくさい」ならまだわかるが、ひどい時には「紐に手を伸ばすのがめんどくさい」という理由で何時間も明かりを消さなかったこともある。怠慢な自分を変えていくには、日常生活の些細な細部を決別の儀式とみなして行動するほかないだろう。

そんなことをだらだらと考えていると、鈍いうめき声のような音が聞こえてくる。音はただちに水滴がポトリと落ちるような可愛らしい響きへと変わり、その小気味良いリズムに導かれて向けられた視線の先で、蛍光灯が点滅していた。

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一日中涼しかった。こんな日の夕方に昼寝をしたらさぞ気持ちの良いことだろう。そう思って、今日は計画的に昼寝をした。 昼過ぎに『力と交換様式』の読書会を終えると、カーテンを閉めて映画を見る。ベルトリッチの『暗殺の森』。見始めるとすぐに睡魔が襲ってくるので、10分くらいその欲望と戯れつつ、頃合いを見計らってベッドに転がり込む。あえて眼鏡を外さずに、目を閉じる。旅行で見た景色とかをなんとなく瞼の裏側で再生しながら、そのイメージが次第に抽象的な図形に変わっていく感覚を味わう。 いい昼寝だった。だから夜はあまり眠くならない。 風呂場で新しい物語をの断片を妄想してみた。最後の時間稼ぎと称して、バブルの名残が色濃く残る街にやってくる。そこで数十年前からタイムスリップしてきたとしか思えないような派手な若い女と出会う。これは『ティファニーで朝食を』だな、と思う。坂道を走る。浪人生の男と、女子高生のカップルが主人公の家に転がり込む。 なんだかいけそうな気がしている。が、これはなんの話なのだろう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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