僕を拭くためのお仕事

article

仕事から帰るとすぐにたまった洗濯物をまとめ、近くのコインランドリーに向かう。洗い終わるまでの一時間で、賞味期限の近いタコを調理する。

ニンニクと唐辛子をオリーブオイルで炒め、玉ねぎを入れてさっと加熱。そこにぶつ切りにしたタコを入れて、トマト缶を流し込む。なぜか家にあるオリーブなんかも放り込んで、30分ほど弱火でコトコト煮ていく。

洗濯物と煮込み料理が作り出した二重の空白を、何で埋めるべきかと考える。しかしこの答えはほとんど自明だ。とっととシャワーを浴びてしまおう。そうして一日のノルマを綺麗さっぱり終えてしまうのだ。

自分でも驚くくらい無駄な時間がない。分刻みのスケジュールで行動するキャラクターがいたよな、と小学生の頃に読んだブラック・ジャックの記憶を引っ張り出し、そこで出てくる成金実業家と自分を重ね合わせる。僕はやはりできるやつだな、とほくそ笑みながら、狭い風呂場で髪を洗う。

バスタオルがない。

髪を泡立てている手が止まる。バスタオルがない。ただの一枚も、身体を拭くためのタオルが存在しない。

数百メートル先の無駄に綺麗なコインランドリーの中で、今頃そいつは暖かい風を浴びてぬくぬくと乾いている。しかしお前がカラッと乾燥させてもらえるのは、僕を拭くというお仕事があるからだ。その仕事を放棄して、お前だけがフワフワになってどうする。そのフワフワは、僕を拭くための柔らかさでしかないのだ。


などと憤るが、濡れタオルを何度も絞りながら身体を拭き、ハンカチみたいな小さな布切れで凍えながら水気を取るだけしかできない。いつもより二倍くらい時間をかけて、ドライヤーで髪を乾かす。

何だか一日中が忙しなかったので疲れてしまい、映画を見ている途中で23時くらいに眠り込む。結局タコは硬いまま。

article
ランダム記事
引っ越しの日。母親と車で新居へと向かう。三連休の初日ということもあり、高速はかなり混んでいた。 着いたらすぐに、引っ越し業者がやってくる。クロネコヤマトの単身パック。容量が既に決まっているサービスだから、入り切らなかったものは車に詰めて持ってきた。業者は業者の、僕は僕の荷物を交互にリズムよく運び入れる。 ヤマトが帰ると、すぐにガス会社の人がやってくる。入れ替わりのタイミングが素晴らしい。 組み立て家具を母親と一緒に組み立て、大まかな部屋の形が見えてくると、机とか照明とかその他諸々の家具を探しにニトリに向かう。まあこれでいいか、と妥協しながら机をいくつかピックアップするが、どれも商品が店にないらしく、取り寄せになってしまう。それならわざわぜ実店舗に来た意味がないな、と若干苛立ちながら、雑多に必要な家具を買っていく。ニトリの店舗は市場ではなくショーケースなんだな、と思う。そういうビジネスの形があることは知っていたし、それが戦略であることはわかるのだが、なんとなく腹立たしい。早いうちに机を部屋に置きたいという僕の狙いが、ニトリのスタイルとは相入れなかったというだけなのだけれど。 結局机はAmazonで注文した。机にはほとんどこだわりがないから、それで十分(であってほしい)。あとドライヤーとかコーヒーを淹れるのに使う器具をいくつか。洗濯機より先に買うべきものではない気がするが、僕の悪い癖で、必需品をどんどん後回しにしてしまう。 プロジェクターのコンセントを忘れてきてしまったことに気がつく。これではなんのために一人暮らしを始めたのかわからない。それに部屋は狭いし長方形だから、配置的にも僕の今持っているプロジェクターでは満足な映像が投影できない気もする。壁に斜めに投射しても、ちゃんと四角い画面を映し出すことができるプロジェクターが欲しい。お金はないが、洗濯機にかけるお金を節約すれば買える。が、流石にそれはまずいか。とっとと金稼ぎをして、狙いのものが買えるだけのお金を貯めなければ、と思う。 夕飯はなんとなく、近くのデニーズで済ます。ちゃんと自炊をして、節約をしなければならないのに、些細な散財をしてしまう癖がやめられない。これもよくない。外食を控え、本を買わずに、新しいプロジェクターを買うだけのお金を貯めたいと思う。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

コメント

タイトルとURLをコピーしました