虚無になると本ばかり買ってしまう

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休日なのに出勤せざるをえず、帰り道無性に虚しい気持ちになったので、最寄駅の書店に立ち寄り小一時間ばかりぶらぶらしていた。

マラマッドの『魔法の樽』、チェーホフの『カシタンカ・ねむい』、カレル・チャペックの『マクロプロスの処方箋』を買った。岩波づくし。今年の一括重版は抜群のラインアップだと思う。

いつも行くタリーズでマラマッドを開く。ずっと『レンブラントの帽子』を積読しているので、それを読み始めるより先に新しい作品を買ってしまったことになる。まあこういうことは日常茶飯事で、先祖返り的に積読を消化することもあるのだからあまり気にしないことにする。

読んだのは「はじめの七年」と「死を悼む人々」の二篇。前者は特に精妙な出来で、時間の取り扱いがうまい。じっくり描写する場面と、勢いの良い省略。細やかな感情の揺れを丁寧に描きつつ、決定的な出来事はさらっと書き流す。素朴な切り返しの中にハッとするようなロングショットが入り込むような感触がある。

技術的に優れた作品を読むと、自分も短編を書きたくなってくる。帰りの夜道にダラダラとそんなことを考えていると、タイトルだけ浮かんだ。

魔法樽を転がして

悪くない題だと思う。でいい気になってぼんやりと冒頭だけ考えたので、ちょっと書いてみようと思う。なんとなく先に一万字という文字数を決めておく。この日記みたいに書くのが一番ストレスなく進む予感がするので、新しい文体を拵えるような準備もしないでいいやと思う。

嘘じゃないんだけど、『魔法の樽』のパクリであることに今気がついた。うーん。転がしてるから許して。記憶が無意識に移行するスピードの速さに驚いてしまう。うとうとしながら別のタイトルを考えよう。


写真を撮る習慣がないので、毎日アイキャッチに困り果ててしまう。というわけでこれは今年の春、神津島に行った時の写真。今のところ学生最後の旅行だったことになる。あとAmazonのリンクがうまく貼れるようになった。ブログ収入で食っていくまであと一歩。

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仕事終わりには結構雪が降っていた。この冬にちゃんと目にした雪はこれが初めてだ。風も強く、ちょっとした吹雪だなと思ったが、「こんなもの雪が降ったうちには入らないよ」だとか「これで吹雪と思ってるとか笑える」とか言ってくる脳内の雪国人が馬鹿にする声が聞こえてくるので、駅から家に帰るまでの道中、シャリシャリと雪の混じった水たまりに足を突っ込もうとも意に介せず、いつもより背筋を伸ばして余裕綽々の表情を取り繕いながら大股で歩く。家に着くや否や浴槽にお湯を張り、それを待つ間ブルブルと震える僕の体を電気ストーブで温めていたら、どうにもその場から離れられなくなり、お湯が少し溢れ出してしまった。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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