幻の野菜

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ずっと引きこもって作業をしていたので、気分転換をしようと買い物に行く。ちょっと散歩もしたいということで、普段は通らない道とかを通ったりする。

いつも行く駅前のところとは別のスーパーは、やはり品揃えや価格帯も異なっており面白く、ついつい余計な買い物をしてしまう。イタリアンパセリが100円だったのでカゴに入れ、アスパラも安かったので購入。そんなふうに野菜コーナーを物色していると、のらぼう菜という野菜が目に入る。

時折実家でおひたしなどにして食べていたが、自分で買ったことはない。古い記憶を呼び返してみると、ちょっと苦味があって、茎の柔らかい野菜だったような気がする。イメージとしては菜の花に近いが、単に菜の花の記憶がのらぼう菜の記憶を塗り替えているのかもしれない。

これはちょっと試してみたいと思う。しかしそんなに野菜を買ってもすぐには食べきれないし、肉や魚介もカゴに入れた上で再検討すべきだと考え、一度野菜コーナーを離れてベーコンとタコをピックアップし、オリーブオイルやトマト缶などを補充して再び野菜のあるエリアに戻る。

戻った時にはもう決めていた。のらぼう菜を食べてみようと。家にない食材はなんだとか、明日の夕飯をどうしようとか、まあそんなことを考えながら食材を見ていても、頭の片隅にはのらぼう菜のことがずっとあったのだ。

そうして僕は野菜コーナーに並ぶ濃い緑色の野菜をカゴに入れ、レジに向かう。家に帰り、買った食材を冷蔵庫に並べていく。

のらぼう菜だと思っていた野菜は、ほうれん草だった。

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今年のお仕事も終わり、完全に年末である。 最終出勤日は午前中に大掃除、午後に職場での飲み会。昼過ぎから飲酒してしまい、十六時くらいにはほろ酔いになってしまう。 「昼から酒飲むやつの気がしれない」と至る所で公言してきたくせに、まあ半ば強制だということで躊躇なくビールやらワインを口に運ぶ。この前泥酔した時以来の飲酒だからか、一口目には若干の緊張があったもののすぐに酔いも回って少しだけ声が大きく早口になってしまう。 家に業者が来る用事があったので、早めに退散。しかし帰りの電車で無性に眠くなってしまう。ついこの間に電車内で眠りこける危険性を知ったはずなのに、睡魔というのはやはり生理的なものであるからどうも抑えることができない。 まあ結局最寄駅でハッと目が覚める程度の眠気であったのでよかった。部屋に戻ると、業者の人が扉前で待っている。遅れたかなと思ったが、そんなことはないらしい。それなら待たせた僕の責任なんてものはないよな、と水をがぶ飲みする。 夕ご飯に油そばを食べる。もう数年は食べていないと思う。なぜだか年末になるとラーメンを食べてしまう。近くにいた友人たちもその多くが帰省をしたり、大切な人と過ごしていたりする。そんな中、底冷えする年の瀬の19時半に、満腹でひとり歩く夜道の寂しさは嫌いじゃない。いつもは頼まない餃子なんか頼んじゃったりしてね。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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