幻の野菜

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ずっと引きこもって作業をしていたので、気分転換をしようと買い物に行く。ちょっと散歩もしたいということで、普段は通らない道とかを通ったりする。

いつも行く駅前のところとは別のスーパーは、やはり品揃えや価格帯も異なっており面白く、ついつい余計な買い物をしてしまう。イタリアンパセリが100円だったのでカゴに入れ、アスパラも安かったので購入。そんなふうに野菜コーナーを物色していると、のらぼう菜という野菜が目に入る。

時折実家でおひたしなどにして食べていたが、自分で買ったことはない。古い記憶を呼び返してみると、ちょっと苦味があって、茎の柔らかい野菜だったような気がする。イメージとしては菜の花に近いが、単に菜の花の記憶がのらぼう菜の記憶を塗り替えているのかもしれない。

これはちょっと試してみたいと思う。しかしそんなに野菜を買ってもすぐには食べきれないし、肉や魚介もカゴに入れた上で再検討すべきだと考え、一度野菜コーナーを離れてベーコンとタコをピックアップし、オリーブオイルやトマト缶などを補充して再び野菜のあるエリアに戻る。

戻った時にはもう決めていた。のらぼう菜を食べてみようと。家にない食材はなんだとか、明日の夕飯をどうしようとか、まあそんなことを考えながら食材を見ていても、頭の片隅にはのらぼう菜のことがずっとあったのだ。

そうして僕は野菜コーナーに並ぶ濃い緑色の野菜をカゴに入れ、レジに向かう。家に帰り、買った食材を冷蔵庫に並べていく。

のらぼう菜だと思っていた野菜は、ほうれん草だった。

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部外者であること 一週間ばかり日記を書いてみました。どうやら僕の書く内容はどれも似通っているような気がします。どんな出来事に対しても、僕の感じ方には一定の傾きがあるような感じです。 いつも部外者であるような気がする。 思えば昔からそうでした。小学校のクラスでも、野球のチームでも、大学のクラスでも職場でも、どこにいたって僕はいつも中心から少し距離を置いた場所で、そこはかとない孤独を感じている。自分はこの集団の主流じゃないことがわかっている。そんな思いを常に抱いてきました。 僕は少しばかりややこしい人間です。自分はどういった集団に属しているのか、その集団の中で自分はどのように位置づけられているのか、そしてその中でどういう風に自分のキャラクターを構築すべきなのか。そんなことばかり考えてきました。小さい頃に転校が多かったことも理由の一つかもしれません。 核のある日記を 昔からエッセイを読むのが好きです。試験前とか、しなければいけないことがあるときに読むエッセイは最高です。ちょっと背徳感を覚えたりもします。 とはいえ、もちろん好きなエッセイとそうでもないエッセイがあります。その違いは何なのだろうか。そんなことを考えていたとき、ふと思いついたのがみうらじゅんのエッセイでした。 マルチタレントであるみうらじゅんが、ちょっぴり猥褻な自分や知人の猥談を語るエッセイです。ほんとか? と思うこともあるのですが、これがまあ面白い。 まず書き出しが最高です。 人生の3分の2はいやらしいことを考えてきた。 全部のエッセイが、この一文から始まります。この統一感! ほとんど『夢十夜』ばりの導入です。何よりも、エッセイ集がただの雑記に終わることなく、ちゃんとした核を持って成立している。 そこで思ったのです。ただの日記ばかり書いていても退屈だし、みうらじゅんが「エロエロ」を主題に文章を書くのなら、僕は「部外者であること」を主題に文章を書こう、と。そういうテーマで連載を持ったことにしよう、と。 そうして企画されたのが、この「部外者日記」です。締切に追われることに漠然とした憧れを持っていた僕は、とうとう自分を編集者兼ライターとして妄想することにしました。ちょっとイタいけれど、まあそれもそれでいいでしょう。 ずっと蚊帳の外にいた。 から書き出すエッセイ(?)を書いていくことにします。まあ普通の日記も書いていきますが……あら大変。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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