無人のまま引退などできない

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同僚から洗濯機を貰い受けることになったので、引っ越してから三ヶ月あまり、あとはガスコンロを購入すればこれで一通りの家具が揃ったことになる。

そういうわけで、昨日も何度目かのコインランドリーに行ったのだが、おそらくはこれが最後になる。無人の店とはいえ、どこか寂しさを感じないわけでもない。誰もいない店内で、一人衣服を放り込みながら、そんなことを考える。

いつも通り1000円の洗濯コースを選んでボタンを押すと、先にお金を入れてくださいと言われる。結局最後まで同じことを言われ続けてしまった。唯一財布に残された千円札を両替機に突っ込んで百円玉を拵え、それらを片手で掴みながら硬貨の投入口に一つずつ入れていく。十枚の百円玉を握りしめ、それらを落とすまいと掌に神経を張り巡らせるようなことは、もしかするとこの先一度もないかもしれない。

一時間が経ち、再びコインランドリーにやってくると、そこには今までみたこともないほど多くの人(といっても七、八人程度)がいる。洗濯が終わるのを待っているのか、それとも洗濯機が空くのを待っているのか。しかしそんなことはわかるはずもない。僕に内緒で引退セレモニーが企画されていたのだ。そんな妄想をしながら衣服を袋に入れていくと、薄いビニール袋が破れてしまう。僕はパンツや靴下を落とすまいと、良い匂いのするかつての汚れ物を抱え込み、一人トボトボと夜道を帰る。

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本棚を注文してしまったので、部屋の片付けをしている。 服はちゃんと畳む。掃き掃除をする。溜め込んでしまった段ボールを捨てる。机の上に無造作に置かれた本をきれいに並べる。本棚をいい感じにする。掃除下手な人あるあるだけど、普段はやらないくせに一度始めると楽しくなってしまってやめ時がわからなくなってしまう。 しかし洗い場の掃除が億劫である。使った後に食器を全部洗うのが正しいことは重々承知しているのだが、それだけはどうしても後回しにしてしまう。 自炊をしようと思ってお湯を沸かしたり炒め物をしたりするとき、ふと訪れる手持ち無沙汰の時間に洗い物をするのが癖になっている。実際、これは結構時間の節約というか、無駄な時間を活用する有効な手段であるとは思う。 掃除の目的は、東東京最強のスーパーおしゃれ文化人部屋を作り上げることだ。POPEYEの「部屋とシティボーイ」特集で取り上げられても何の違和感もないような部屋にしたい。そんな夢想をしながら片付けをしているから、雑誌で取り上げられないような、生の生活空間にはどうしても手が及ばない。むしろ「壁に何の映画のポスターを貼ろうかなー」などと新たなアイテムの導入について考えてしまい、汚れた食器には関心が向かない。 洗濯機より先に買うべきものではない気がするが、僕の悪い癖で、必需品をどんどん後回しにしてしまう。 ちょっと前にコーヒー周りの器具を購入したとき、こんなことを書いた。どうやら僕は「掃除=生活感の抹消」だと思っている節があり、結果として実際に生活が営まれているまさにその場所をなぜだか軽視してしまうらしい。 そんなことを考えていたが、気がつけば一時くらいになっており、そろそろ寝なければ翌日に支障が出るだろうということで就寝。まあ明日の朝やればいいや…… もちろん寝坊。かろうじて日記を書けたくらいで、汚れた食器はシンクでひっそりと洗われる日を待っている。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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