本棚整理

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今日も引越しの準備。

壁面に取り付けていた本棚を解体するために、まずはびっしりと詰め込まれた大小様々の本を取り出し、段ボールに入れる。緻密に構成した本の並びを崩さないようにと気を配るが、段ボールに入らないのでは本末転倒ということで、多少の妥協は許容せざるを得ない。持っていくものと実家に置いておくものを仕分けしたかったのだが、手に取る本すべてにそれぞれ異なる愛着なり有用性の香りを嗅ぎ取ってしまい、結局ほとんど全部を段ボールに詰め込んでしまう。

迷った本を三冊ほど。

『堤中納言物語』

古書店に行くと、今後読む可能性とかを考えずに欲しいものをどんどん買ってしまう僕が、その中でも最も読まないと確信している本。新品同然の岩波文庫が100円だったという理由で買った。多分浪人生の頃。古典の勉強になるかもという理由も無理やり付与したが、もちろんそんなことは起こり得るはずもない。置いていく本として分類。

『魅惑のフェロモンレコード』

みうらじゅんがカバーにフェロモンを感じたレコードを紹介する一冊。実家に置いていくのが恥ずかしいという理由で、持っていく本として分類。

『判断力批判』

岩波のやつ。最近美学を勉強していることもあって、この本自体を読むモチベーションは日に日に高まっているのだが、岩波の訳はいまいちだという話をよく聞く。この訳の難解さは、カントが敬遠される理由の一つにもなっているらしい。せっかく買ったのだからと岩波に固執して、三批判書を読まないことになったら悲しい。それに上巻しか持っていないので、置いていく本として分類。


読まない積読本は、あればあるほど正しい。そのことは自明なのだが、多少なりとも諦めを持つことは必要らしい。とはいえ九割くらいの本は持っていくことにした。ワンピースも(全巻揃っているわけではないが)、迷った挙句に持っていく。明らかに本棚のスペースは不足するが、その問題は引っ越しが済んでから解決することにしたい。

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仕事終わりに映画館へ。ずっと前から楽しみにしていたケリー・ライカートの『ファースト・カウ』を見る。 あらすじ 西部開拓時代のオレゴンで出会った、流れ者の料理人クッキーと中国人移民のキング・ルー。意気投合した二人は、その街の有力者が連れてきた最初の牛からミルクを盗んでドーナツを作り、一攫千金を狙う。 感想 立ち去るかもしれない男 抜群に良い映画だった。特に素晴らしいのが、「この人はもう帰ってこないかもしれない」と思わせる画面づくりの巧みさだ。 序盤、キング・ルーの小屋に初めて招待されたクッキーは、キング・ルーが小屋の外で薪を割っている間その中をうろうろと歩き回る。ちょっと掃除をすると、クッキーは小屋の外に出る。普通に考えればカメラは外に出たクッキーの姿を追いかけていくものだろうが、ケリー・ライカートは小屋の中にカメラを残す選択をする。無人となった小屋の窓からは、薪割りに勤しむキング・ルーの姿が見えている。 「くつろいでくれ」と言って火を熾すために斧を振る男の親切心が無視されてしまうのではないかという緊張感。無人になった小屋は静かに張り詰めた空気に満たされていく。この男は、何も言わずに立ち去ってしまうかもしれない。 少しするとクッキーは小さな花を片手に戻ってくる。別離の予感は杞憂に終わるのだが、この映画にはこうした緊張感が常に漲っている。いつも一緒にいることが約束されていない二人の友情。その危うさはラストシーンに最高点を迎えることとなる。 デッドマン? 本作は冒頭にウィリアム・ブレイクの詩が引用される。19世紀のアメリカで、ウィリアム・ブレイクといえば、ジャームッシュの『デッドマン』を連想してしまう。 とはいえ直接の関係が目についた訳ではない。ジャームッシュとライカート。同世代で、現代のアメリカを代表する二人だと思うし、実際に両者は関係があるはずだから、この二人について書かれた論考でも読んでみたいと思う。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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