本棚整理

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今日も引越しの準備。

壁面に取り付けていた本棚を解体するために、まずはびっしりと詰め込まれた大小様々の本を取り出し、段ボールに入れる。緻密に構成した本の並びを崩さないようにと気を配るが、段ボールに入らないのでは本末転倒ということで、多少の妥協は許容せざるを得ない。持っていくものと実家に置いておくものを仕分けしたかったのだが、手に取る本すべてにそれぞれ異なる愛着なり有用性の香りを嗅ぎ取ってしまい、結局ほとんど全部を段ボールに詰め込んでしまう。

迷った本を三冊ほど。

『堤中納言物語』

古書店に行くと、今後読む可能性とかを考えずに欲しいものをどんどん買ってしまう僕が、その中でも最も読まないと確信している本。新品同然の岩波文庫が100円だったという理由で買った。多分浪人生の頃。古典の勉強になるかもという理由も無理やり付与したが、もちろんそんなことは起こり得るはずもない。置いていく本として分類。

『魅惑のフェロモンレコード』

みうらじゅんがカバーにフェロモンを感じたレコードを紹介する一冊。実家に置いていくのが恥ずかしいという理由で、持っていく本として分類。

『判断力批判』

岩波のやつ。最近美学を勉強していることもあって、この本自体を読むモチベーションは日に日に高まっているのだが、岩波の訳はいまいちだという話をよく聞く。この訳の難解さは、カントが敬遠される理由の一つにもなっているらしい。せっかく買ったのだからと岩波に固執して、三批判書を読まないことになったら悲しい。それに上巻しか持っていないので、置いていく本として分類。


読まない積読本は、あればあるほど正しい。そのことは自明なのだが、多少なりとも諦めを持つことは必要らしい。とはいえ九割くらいの本は持っていくことにした。ワンピースも(全巻揃っているわけではないが)、迷った挙句に持っていく。明らかに本棚のスペースは不足するが、その問題は引っ越しが済んでから解決することにしたい。

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今日も夏季休暇なので、午後から国立新美術館でやっているテート美術館展に行く。同僚が折に触れてこの展覧会の話をしていたので、知らず知らずのうちに興味を抱いていたらしい。 平日の日中だというのに、かなりの人混み。入るのにもちょっと時間がかかる。外国人観光客らしき人も多い。 壁際に掛けられた絵を見ていくのだが、別に順路などないのに人の流れができていた。気に入った絵の前ではしっかり立ち止まって鑑賞したいのだが、なんとなく進まないといけないような気持ちになってしまうのが辛い。写真を撮るミッションを課せられている人も多い。まるでアトラクションみたいだ。 近い将来、美術館に順路を守る義務が設けられる想像をした。ベルトコンベアに乗って、等速度で機械的に絵を視界に収めていく。 また悪口を書いてしまったが、作品はどれも面白かった。とりわけ気に入ったのは、キャサリン・ヤースという人の「廊下」という写真作品。若干縦長の構図で、中央に向かって伸びていく廊下を映す。僕の好きな構図だ。写真自体には何かしらの加工がなされていて、遠近感が狂ったような感覚。 美術館の何が良いかって、あの空調とそこを流れる緩やかな時間だと思う。東京ど真ん中の特別展に、後者を期待するのは筋違いだと反省。 展覧会を出ると、文句なしの夕暮れ。美術館の近くにあったネオンサインの光るお店に心惹かれる。何のお店だっけ。ジャズバー、というにはちょっと派手すぎるような。それはともかく、一人でここに入る勇気はまだ持ち合わせていない。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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