一人でコンビニに行くのは寂しい

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23時すぎ。昨日から読み始めたアンドレイ・クルコフの『ペンギンの憂鬱』を読んでいると、いつも常備している2ℓの水がなくなってしまう。

口が寂しいと作業をしたり本を読んだりしてもあまり集中できない性質なので、まだ眠くないこの夜を引き延ばすためにも是非とも水が欲しい。今日はリモートだったので全く外に出ていないし、ちょっとは散歩をした方が良いような気もする。

ただシャワーも浴びてガッツリ寝巻きの状態。わざわざ外出するのは億劫だし、夜に追加の花粉を浴びるのはあまり好ましくない。

どうしようかとしばらく迷っていると、いつの間にか本には集中できていない。変にスマホを触りだしてしまって、適当な人物のWikipediaを読み流している。このまま大久保利通の人物評価を読んでも仕方がないだろうと思い、ようやく重い腰を上げて部屋を出る。


今日は大学の卒業式だったらしい。僕が京都を去って、ちょうど一年が経つ。幸運にも学年を問わずに友人を持てたおかげか、これからも京都に居座ってくれる人がまだ残っているわけだが、ただその数は減っていく一方だ。

ひとりコンビニへと向かう夜道を歩きながら、誰かの買い物に付き合ってガヤガヤと丸太町通を練り歩く集団のことを思い浮かべたりした。

体調もだいぶ戻ってきた。

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ポンコツゆえに少し残業をしてしまい、時間的にも気力的にも自炊をする気にならないので、弁当でも買おうと思いスーパーに立ち寄る。 半額弁当を期待するものの、棚はもうスカスカ。残っているのは空豆の天ぷらや焼き豚など、おつまみにしかならなそうなものばかり。インスタントラーメンに野菜でも入れるか、と食べたいものと実際に作ることのできるもののちょうど中間を探り当てるべく頭を悩ませていると、ふと良い考えが浮かぶ。 パック寿司だ。 閉店間際で安くなったパック寿司を、高級寿司店の紹介動画を横目にパクパクと食べよう。僕が昔からよくやっている(そしてよく言及している)ライフハックの一つだ。 とはいうものの、弁当が売り切れている時間にパック寿司が売られている保証はない。むしろ弁当と同列のものとして、あの冷蔵棚も綺麗さっぱり空っぽになっているに違いない。 そう思いながらのんびりとスーパーを一周し、少しばかりの野菜と果物をカゴに入れて寿司のある場所に向かう。 ずらっと並ぶ寿司たち。1100円の寿司が半額。600円の寿司は三割引だ。 さてどうしようか。疲れ切った頭であっても、前者は550円、後者は420円であることくらいわかる。いつもなら確実に前者を選ぶ(僕の悪いところはこういうところにある)のだが、目を凝らして見てみても、両者の違いはあまりわからない。 お得感に負けて散財をする悪癖とはもう卒業しよう。そう考えて安い方をカゴに入れてニンマリとする。上手に節約ができた時の気持ちよさは何にも代え難い。 閉店間際ということもあってか、レジ打ちをしている店員が少なく、稼働している二つのレジの前には長い列ができている。今日は洗濯もしなければならないので早く帰りたいと思うが、こればかりは仕方がない。 列が進むのをじっと待ちながら、手持ち無沙汰の人間を釣るための商品に目をやる。騙されてはいけない。1100円(550円)の寿司に対する欲望に打ち勝ったのだから、ここでスーパーの戦略に乗せられるわけにはいかない。ビーフジャーキーなんて食べたくないさ、と自分に言い聞かせながら、ひたすらに待ち続ける。 ふと向けた視線の先に、西洋わさびが110円で売っている。確かに安い気がする。昔見たイタリアンの動画で、オリーブオイルに西洋わさびを溶いてちょっと醤油を垂らしたドレッシングの紹介があったことを思い出す。あれは美味しそうだったな。パリッと新鮮なレタスとトマトにかけて食べたら最高だろうな。 いけない。このカゴには新鮮なレタスもトマトも入っていないし、冷蔵庫にある野菜はニンジンだけだ。西洋わさびを使う機会なんてしばらくやってこない。使わないものをカゴに入れさせるのが、小売店の憎たらしい戦略であることくらい十二分に承知しているではないか。 しかし。 今カゴに入っているパック寿司。この寿司に、わさびは入っているだろうか。わさびも醤油も入っていない寿司を握らされてイラッとしたのは、この街に住み始めてからのことではなかったか。 西洋わさびの横に、ちょっといいやつっぽいわさびも並んでいる。280円。パック寿司を美味しく味わうために、わさびの力を借りたい。むしろ新鮮さから遠く離れた割引済みの寿司をごまかすためにも、わさびくらいはちゃんと美味しいものを付けたい。 列はどんどん進んでいく。さっきまで動きがなかったのが嘘のようだ。ああ。早く決断しなければ——。 寿司にはわさびをつけた方がうまい。洋風わさびなんて使うのは西洋かぶれだ。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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