うたた寝の地点

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カウリスマキの『パラダイスの夕暮れ』を見る。初見のつもりで見始めたら、あらゆるショットがどれも既知のものであるように思え、カウリスマキの映画はどれもこれも似ている、などと雑な結論を下しそうになったが、よくよく記憶を掘り返してみると一年ほど前に途中で寝落ちしてしまったことを思い出す。とはいえどこで眠ってしまったのかは覚えておらず、画面が全くの新しい画面として現れる瞬間を待っていると、じわじわと襲ってくる眠気に抗うこともできずうたた寝をしてしまう。

目を覚まし、シャワーを浴びて再び映画と対面すると、そこに広がっているのは完全に新しい映画であった。一年越しに、同じ映画の同じ地点で眠ってしまったらしい。こういうことはしばしば起きる。

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鼻毛が出ている。 毛先をつまんで引っ張ると、普段は感じることのない箇所が刺激されて楽しい。 野球部だった頃に、鼻毛が出ていると指摘されて恥ずかしい思いをした記憶がある。「別に出てねえし」と強がるほど子供じゃないが、「伸ばしてるんだ」と言えるほど成熟した年頃でもなく、曖昧な返答をしてその場を誤魔化そうとした。 普通ならそれで会話は立ち消えになるはずだが、その時はなぜだか僕の意に反して鼻毛の話題が継続された。するとふと、誰かの口から「イケメン鼻毛出ない説」が提唱された。部員の中で最もかっこいい後輩に話を聞くと、確かに鼻毛を切ったことはないという。 それで僕たちは、部員を一人一人吟味し、あいつは鼻毛が出るか出ないかで徹底討論をした。あいつは本質的には鼻毛が出るタイプだ、あいつの鼻毛は癖毛に違いない、などとよくわからないラベルを貼ってささやかに盛り上がったような気がする。あまりにも野球部の部室の話題すぎて、それを思い出すとちょっと笑ってしまうくらいだが、結構楽しかった。 そんなことを思い出したのだが、もう眠い。無理やり話題を引っ張り出してくるくらい、今日は取り立てて書くに値する出来事が起こらなかったことを思うと、少しばかり虚しい気持ちになる。 鼻毛は明日の朝忘れずに切る。 画像生成AIで、「カンディンスキー 野球」と書いたら生成された写真。野球をやっていたことは、やはり信じられないような気がしてしまう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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