寒さに慣れる(ふりをする)

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仕事終わりには結構雪が降っていた。この冬にちゃんと目にした雪はこれが初めてだ。風も強く、ちょっとした吹雪だなと思ったが、「こんなもの雪が降ったうちには入らないよ」だとか「これで吹雪と思ってるとか笑える」とか言ってくる脳内の雪国人が馬鹿にする声が聞こえてくるので、駅から家に帰るまでの道中、シャリシャリと雪の混じった水たまりに足を突っ込もうとも意に介せず、いつもより背筋を伸ばして余裕綽々の表情を取り繕いながら大股で歩く。家に着くや否や浴槽にお湯を張り、それを待つ間ブルブルと震える僕の体を電気ストーブで温めていたら、どうにもその場から離れられなくなり、お湯が少し溢れ出してしまった。

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遅くまでお酒を飲み、そのまま転がり込んだ人の家で目を覚ます。お酒を飲んだ翌日は無為に過ごしてしまいがちなので、このまま直帰せずにどこかに寄り道しようと思う。 二日酔いに優しいすっきりとした醤油ラーメンを食べながらあれこれと戦略を練っていると、家近くの映画館でちょうどいい時間に『夜明けのすべて』が上映されていることを知る。行こう行こうと思いながら結局行けずじまいになってしまった作品なのでラッキーだった。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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