寒さに慣れる(ふりをする)

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仕事終わりには結構雪が降っていた。この冬にちゃんと目にした雪はこれが初めてだ。風も強く、ちょっとした吹雪だなと思ったが、「こんなもの雪が降ったうちには入らないよ」だとか「これで吹雪と思ってるとか笑える」とか言ってくる脳内の雪国人が馬鹿にする声が聞こえてくるので、駅から家に帰るまでの道中、シャリシャリと雪の混じった水たまりに足を突っ込もうとも意に介せず、いつもより背筋を伸ばして余裕綽々の表情を取り繕いながら大股で歩く。家に着くや否や浴槽にお湯を張り、それを待つ間ブルブルと震える僕の体を電気ストーブで温めていたら、どうにもその場から離れられなくなり、お湯が少し溢れ出してしまった。

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コーヒーの粉の分量を測るためのメジャースプーンを持っていないから、ここ二日はなんとなくの分量で淹れるのだが、なかなかどうして薄くなってしまう。ケチなのに突発的に散財してしまうという人間として最も醜い性質を持っているのかもしれない、と朝から暗い方向へと考えが広がっていく。 コーヒーはたくさん飲みたいが、粉を消費するのは嫌だという無意識。スプーンさえあれば適当な分量はわかるから、その無意識を押しやって自分なりの美味しいものを作ることはできる。しかしそうした秤のようなものなしに自分を律することはやはり難しい。まあこれも慣れなのかもしれないが。今日こそ帰りにメジャースプーンを買う。 一人暮らしをすると、どうしても堅実な生活より先に洒落た生活を目指してしまう。掃除機よりプロジェクター、歯ブラシをいれるコップよりプラネタリウム。部屋の一部だけが立派になっていき、そのツケが押し入れの中に詰め込まれていく。これは都市開発の縮図だな、と思う。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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