寒さに慣れる(ふりをする)

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仕事終わりには結構雪が降っていた。この冬にちゃんと目にした雪はこれが初めてだ。風も強く、ちょっとした吹雪だなと思ったが、「こんなもの雪が降ったうちには入らないよ」だとか「これで吹雪と思ってるとか笑える」とか言ってくる脳内の雪国人が馬鹿にする声が聞こえてくるので、駅から家に帰るまでの道中、シャリシャリと雪の混じった水たまりに足を突っ込もうとも意に介せず、いつもより背筋を伸ばして余裕綽々の表情を取り繕いながら大股で歩く。家に着くや否や浴槽にお湯を張り、それを待つ間ブルブルと震える僕の体を電気ストーブで温めていたら、どうにもその場から離れられなくなり、お湯が少し溢れ出してしまった。

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夜、最近アマプラに入った『十二人の怒れる男』を見ていたら、中盤くらいで激しい通り雨が降る場面があった。とはいえこの映画はほとんど一つの室内で展開される映画であるから、その雨は視覚的に表現されるより先に音として現れ、以降そのザラザラとした雑音が通奏低音のように映画全体の雰囲気を作り上げるのだが、おそらくは映画の中で雨の音が強調されると同時に現実の東東京でも雨が強まり、部屋の外から聞こえてくる重苦しい水しぶきのざわめきが映画の音と奇妙に反響しあって、なんと形容すべきかわからない奇妙な(とはいえ悪くない)視聴環境を作り上げていた。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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