行進を率いて

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いつもは通らない待ち時間の長い信号で、疾走するトラックの立てる轟音を聞いて、地面がじりじりと振動するのを感じながらひたすらに待つ。

自転車に乗る大学生と思しき四、五人の集団が、ただ一人の歩行者に合わせてゆっくりとよろめきながら近づいてくる。灰色めいたオレンジ色のジャンパーを着た六十歳くらいの男性が、斜めに視線を上げて晴れた空を眺めやっている。制服を着た女子高生のローファーが立てる小気味よい足音が心地良い。

みんな僕の知らない人たちで、今後も関わりを持つことはないだろう。そんな僕たちが広い道路の前で、ひたすらに赤く光り続ける信号機に留められてじっと静止している。

何だか感傷的になっていることを自覚しつつ、確かに信号が青になったことを確認して道路を横断する。僕の前には誰もいない。どうやら歩行者の先頭を任せられているらしい。しかし酔いが回っているせいか、三分の一ばかり進んだところで、まだ赤信号なのではないかという嫌な予感がして、ふと後ろを振り返ると、ついさっき勝手な連帯を覚えた十人ばかりの人たちが僕について歩いている。

もしまだ赤信号だったら責任重大だなと思う。でも振り返って前を向き、ちょっと視線を上げれば青い光が点滅もせずに光っていて、僕はほっと胸を撫で下ろす。

渡り終わって、家の前まで歩いている途中で、彼ら彼女らは僕を信頼して歩いたわけではないことに気がつく。さっさと風呂に入って寝よう。

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年末なので、まとまった休日に入る。今年のハイライトは、やはりスマホ財布鍵紛失事件であろうか。 スマホを失くした僕は、この状況を好機と捉えるべく、あえてスマホを買わないという選択を取ることにした。スマホがあることの便利さを再確認したいという思いもあるし、スマホがあるせいで失った時間を取り戻そうとしているともいえる。まあスマホがないという確固たる事実を良いように捉えなければ、僕が失ったものはなかなか大きくて堪え難い、というのが本当の理由である。 もちろんそのせいでLINEも見られないし、集合場所にきちんと行くためには家を出る前に入念な下調べが必要である。結構面倒ではあるが、案外なんとかなる。というより、連絡が来ないのでなんとかなっているのかを判定する方法がほとんどない。絶対に無視している連絡もあるし、忘れている約束もあるだろうが、それを確認する術がない。 しかし年末である。年の瀬である。各地に散らばった人間も、この期間になれば皆お祭り騒ぎ。久方ぶりに連絡をとってみようか、といつもならば躊躇ってしまうような連絡も、ほんのり回り始めたアルコールが煽り立てるままいきおい送ってしまう季節である。 そう。 僕のスマホには甘酸っぱい連絡が届いている! これは信じていいことなんだよ。なぜって—— ちょっと飽きてしまった。日記でこんなふうに書くと疲れるからやめよう、と誓ったはずなのに。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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