七年ぶり

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ポール・オースターの『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』を読み始めた。市井の人から物語を集め、それらを精選した掌編集だ。ラジオ番組での企画がもとで、「現実」に起こった「非現実」的なお話が集められている。

これがかなりいい。フィクションが作り出されるそのきっかけとなるようなエピソードたち。確か受験勉強をしていた頃に地元の本屋で買ったのだから、もう7年ほど本棚で眠っていたことになるのだが、もっと早く読んでおけばよかったと後悔している。日記も飽きてきたところがあるし、似たようなことが僕にできないかと考えたりもする。

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夜、ポール・トーマス・アンダーソンの『ファントム・スレッド』を見る。 個人的にはオールタイムベスト級の大傑作だった。ストーリーも面白いが、こんなにも職人的で正確なつなぎで画面を連鎖させておきながら、大切な場面では抜群に魅惑的なショットを見せてしまうバランスがすごい。 しかしこの良さはある意味では語りにくいものだとも思う。この映画の美点は、やはりあくまで「正確さ」に帰せられるものであって、特筆すべき瞬間を挙げようとすると「あれ、どこがいいと思ったんだっけ」と考え込んでしまう。初期PTA的な過剰な華麗さは抑え気味だし(といってもラストシーンとかを見れば問題なく味わえるわけだが)、映画全体のサスペンスは主人公の「気難しさ」が支えているのみで、まあ淡白な印象を与えなくもない。 だからこの映画を正しく語るためには、古典的な映画との比較、というよりはむしろ類同性を指摘することが最良なのだろうと思う。それくらい完璧に近い。何かを語るためのきっかけとなる隙がない。 ヴェンダースの映画に見られる「ぎこちなさ」とか「甘さ」みたいなものは、ある意味で批評的な言葉を触発するものなのだろうなと思う。だってヴェンダースについての文章って多すぎやしませんか。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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