カード決済をする勇気

article

昼ごはんにローソンで麻婆丼を購入。

職場にも電子レンジがあるのだが、普通のやつなので温めるのに時間がかかる。今日は列も並んでいないから、1600wの電子レンジで素早く熱々にしてもらおうと決める。

その間に会計。いつも通りクレジットカードを取り出し、差し込み口に入れようとすると、カードにWi-Fiのようなマークがあることに気がつく。最近新しくなったばかりで気がついていなかったのだが、タッチ決済用のマークと考えるのが妥当だろう。

「カードでお願いします」と告げてから数秒間、そのマークをじっと見て思案する。当たり前のごとくタッチをして、「それタッチ決済できないですね」と言われるのは恥ずかしい。とはいえ挑戦を先延ばしにして技術の進歩を享受しないのは、時代についていけなくなった老人との誹りを受けても仕方がない。

電子レンジに麻婆丼を入れ、再び僕に正体した店員が怪訝な表情で僕を見つめる。カードを持ったまま、しかめ面で固まっている男に不信感を抱いているのだろう。それに気配で察するに、僕の後ろには新しく一人の客が並んでいる。

大体恥ずかしいからなんだというのだ。会計がスムーズにいかなかったからといって、別にそれで僕のことを軽蔑する人間などいないはずだ。僕は勇気を出して、そのカードをカードリーダーの上にそっと置く。

一瞬で決済が終了した。そうして僕は新しい技術を自分のものにしたのである。購買意欲もマシマシである。


そういえば一緒にサラダチキンも買ったのだった。食べるのを忘れて職場の冷蔵庫に入ったまま。

article
ランダム記事
夕飯も風呂も歯磨きも全て終えてあとは寝るだけの状況を作ってベッドの上で寝転んで本を読んでいると、台所上に設置された蛍光灯がつけっぱなしになっていることに気がつく。こういうところから節約の意識を高めていかなければならないと思うが、珍しくもせっかく読書に集中できているので立ち上がる気が起こらない。 しかしそのことに気がついてしまったが最後、文章を追う僕の目は滑るばかり。こうも簡単に集中が途切れてしまう僕の散漫癖に辟易としながらも、とはいえ横臥の姿勢を崩すのはやはり面倒で、ついつい手元にあるスマホをいじってしまう。 こうなってしまったら読書は諦めて眠りにつくのが一番だが、とはいえ立ち上がって電気を消す必要がある。とりあえずスマホを充電ケーブルに差し込み、目覚ましをセットする。白々しく光る蛍光灯のをじっと眺めやりながら、ありもしない尿意を捏造して立ち上がる理由を拵える。 今まで散々電気を無駄遣いしてきたなと思う。今みたいに「立ち上がるのがめんどくさい」ならまだわかるが、ひどい時には「紐に手を伸ばすのがめんどくさい」という理由で何時間も明かりを消さなかったこともある。怠慢な自分を変えていくには、日常生活の些細な細部を決別の儀式とみなして行動するほかないだろう。 そんなことをだらだらと考えていると、鈍いうめき声のような音が聞こえてくる。音はただちに水滴がポトリと落ちるような可愛らしい響きへと変わり、その小気味良いリズムに導かれて向けられた視線の先で、蛍光灯が点滅していた。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

コメント

タイトルとURLをコピーしました