ちいさな猫に、おおきな言葉を

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映画美学校の脚本コースに通っていたときに、課題として書いた作品です。2022年の夏くらいに書きました。映像化するとだいたい60分くらいだと思います。

あらすじ

御子柴高校演劇部は、学校内に自前の劇場を持ち、その場所を中心として精力的に活動していた。そんなある日、劇場の取り壊しが突如として通告される。
一方的な決定に反対するべく立ち上がった、現役の演劇部員たちと卒業した演劇部の元部長。彼らはさまざまな工夫を凝らして、劇場の取り壊しをやめさせようとする。
しかし、思いの強さは人それぞれ違った。
はじめは一つだったはずの目的が、次第にすれ違っていく。無謀な戦いの果てに、彼らが行き着く先は——。

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いつも通り仕事終わりに最寄りのタリーズで作業をする。寝不足でもちゃんと椅子に座ってパソコンを睨み付けることができるようになったのは、自分の中でも結構大きな変化だ。 思えば学生生活の半分以上は、布団の上で寝転がっていた。リサイクルショップで買った二千円くらいの椅子は背もたれが高すぎて首を後ろにそらすことが出来ず、身体の上半身が常に痛む僕にとってはあまり好ましくない代物だった。というより、その椅子に座るのは苦行だった。社会人になって一日中座っていなければならないことを思うと、暗澹たる気分になった。 それによく考えれば、三回生くらいまで部屋に椅子らしい椅子がなかった。食パンの形をした座椅子と、こたつ机があるだけ。どうしても座りたくなった時は、ベランダに出てエアコンの室外機に腰を下ろすか、便器にお尻をのせて汚れたドアの裏側をじっと見つめるしかなかった。だから通販で安い机を買い、部屋に椅子を導入したときはこれで生産性が千倍くらいになるものだと信じて疑わなかった。 まあそういうわけで、僕は大学の五年間のほとんどを、一枚の汚れた布団の上で過ごしたのだ。最初の方は定期的に干したりもしていたけれど、最後の方は年がら年中部屋の中で僕の汗を吸い込むばかり。随分と申し訳ないことをしたと思う。 そんな布団を、僕は京都を去るときに何の感慨も持たないまま、ゴミ袋に入れて捨てた。45リットルの黄色い袋はパンパンに膨れ上がり、袋を縛るために僕はポリエチレンの紐のような箇所を2倍くらいに引き伸ばした。収集場所に運ぶ途中で袋ははち切れてしまった。あれが僕と布団との最後の対面だったことを思うと、何だかやはり申し訳ない気持ちになる。 寝たきりになるまで、あんなに布団と戯れる時期はもうやってこないのだと思う。どんな高級なマットレスを買おうと、僕はそいつと大人の関係を結ぶほかない。さよなら布団、さよなら僕の退屈な日常。 名古屋で出会ったアメ横の写真。この建物が何の建物であるかは知らない。調べたらわかることを、あえて調べないのもたまには悪くない。日常生活に写真が不足している。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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