article 行進を率いて いつもは通らない待ち時間の長い信号で、疾走するトラックの立てる轟音を聞いて、地面がじりじりと振動するのを感じながらひたすらに待つ。自転車に乗る大学生と思しき四、五人の集団が、ただ一人の歩行者に合わせてゆっくりとよろめきながら近づいてくる。灰... 2024.03.18 article
article 黄身トロとキスシーンに騙されてはいけない 大学の頃の友人と上野でお酒を飲んだ。予想していた通りかなり混雑していて、十八時過ぎに行ったのだがメインの通りにあるお店はほとんどが満席で入れない。それでちょっと裏に行って適当な焼トン屋に入ると、そのお店がかなり良かった。焼きたての串は香ばし... 2024.03.17 article
article 素材画像で神経衰弱 デザイン素材でよくみる謎の外国人でトランプを作って神経衰弱をしたら面白いのでは……!仕事からの帰りにそんなことをふと思いつき、課金してしまったCanvaを使って簡単なイメージを作ってみることにする。やり始めると「これはやっぱり動画だな……」... 2024.03.16 article
article 不愉快な顔に目を瞑るな どこかで遅延が発生したのか、帰りの電車がいつもにまして混みあっている。人が押し合いへし合いしている狭い密室で、観光客と思しき人たちが仲間たちとニヤリと笑いつつ、時折本気で嫌がっている表情も浮かべたりする。まあそりゃそうだと思う。満員電車って... 2024.03.15 article
article あなたの顔を思い出せない 仕事終わりにオフィスの入口でエレベーターを待ち構えていると、脇にある傘立てに目がいく。ここには先日から放置されたままのビニール傘が刺さっている。しかし一日を通して雨とは程遠い天気で(朧げな記憶)、その帰り道に長い傘を持って歩くのはどこか恥ず... 2024.03.14 article
article 正しいバスに乗り込む どうしてももう帰路につかねばならない時間になり、最後の抵抗をやめて友人とともにトボトボとバス停へと向かい、京都駅へと向かう206番のバスを待つ。マルシン飯店に並ぶ十数人を視界の片隅におさめながら、明日からの労働やら東京での生活やらを思ってひ... 2024.03.12 article
article 通った店の限定メニューを選べないということ 京都で一人暮らしをしていた頃によく行ったラーメン屋を訪れると、券売機のところで二人組の男女が楽しげに声を掛け合ってラーメンを選んでいる。おそらくは職場の先輩後輩で、最近付き合い始めたばかりという感じ。女性の明るい笑顔が眩しい。えー、どれにし... 2024.03.11 article
article エプロンを畳めない 職場の人とジンギスカン屋に行く。そこではこんもりとした山型の鉄鍋に羊肉ともやしが載っているタイプのジンギスカンではなく、鉄網で羊肉を焼いていくスタイルの料理が提供されている。まあそれは焼肉というほかない料理で、ちょっと癖のある脂の旨みが香ば... 2024.03.08 article
article 雨の音が重なって 夜、最近アマプラに入った『十二人の怒れる男』を見ていたら、中盤くらいで激しい通り雨が降る場面があった。とはいえこの映画はほとんど一つの室内で展開される映画であるから、その雨は視覚的に表現されるより先に音として現れ、以降そのザラザラとした雑音... 2024.03.06 article
article 鰻に近づいた夜 仕事が終わってもムカムカがどうにも収まらず、心穏やかでないまま帰路に着く。この帰り道に読もうと楽しみにしていた『違国日記』の四巻を開く気分にもなれず、だらだらとスマホを眺めて電車に乗っていると、ちょうど閉まったばかりのドア上に最寄駅の名前が... 2024.03.05 article