贅沢なカレー

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ゆっくり起きられる日も今日が最後かと名残惜しさを覚えつつ、十時くらいに寝床から這い出す。簡単に日記を書いて、コメダ珈琲へ向かう。デカいカツサンドを食べ、デカいコーヒーを飲むながら川上未映子の『黄色い家』を読む。

隣の席にやってきたおじいちゃんが、頼んだコーヒーに一口も手をつけず十分くらいで席を立った。本当の贅沢とはこういうことなのだと思う。

三連休はじっくり休むつもりだと腹を決めていたから、ダラダラとネットサーフィンをしている時間にも罪悪感があまりない。今日はどういう一日にするのかを決めてからその一日を過ごすことが、幸福につながっていくのだという当たり前の事実を再確認する。

カレーを大量に作る。一人暮らしをしていたのは合わせて四、五年くらいだが、まともにカレーを作ったのはこれが最初だ。大量に作ってしまったポトフに飽きがきてカレー粉を入れたことはあるが、最初からカレーを作るぞと決めてかかったことはない。カレーは好きなのに、なぜなのだろう。

小さい頃、好きな食べ物といえばカレーを挙げる同級生が大半を占めていた時期に、僕はカレーを一番好きな食べ物だと思っていなかった。父親が取引先からもらってくるアワビの煮付けが一番好きだった。そのことが関係しているかとも思ったが、カレーを作らない理由は多分根菜の調理がめんどくさいからだ。

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一日中涼しかった。こんな日の夕方に昼寝をしたらさぞ気持ちの良いことだろう。そう思って、今日は計画的に昼寝をした。 昼過ぎに『力と交換様式』の読書会を終えると、カーテンを閉めて映画を見る。ベルトリッチの『暗殺の森』。見始めるとすぐに睡魔が襲ってくるので、10分くらいその欲望と戯れつつ、頃合いを見計らってベッドに転がり込む。あえて眼鏡を外さずに、目を閉じる。旅行で見た景色とかをなんとなく瞼の裏側で再生しながら、そのイメージが次第に抽象的な図形に変わっていく感覚を味わう。 いい昼寝だった。だから夜はあまり眠くならない。 風呂場で新しい物語をの断片を妄想してみた。最後の時間稼ぎと称して、バブルの名残が色濃く残る街にやってくる。そこで数十年前からタイムスリップしてきたとしか思えないような派手な若い女と出会う。これは『ティファニーで朝食を』だな、と思う。坂道を走る。浪人生の男と、女子高生のカップルが主人公の家に転がり込む。 なんだかいけそうな気がしている。が、これはなんの話なのだろう。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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