他人の会話は断片にすぎず、僕は何もわからない

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朝、通勤電車に乗っていると、僕の前に座っている30歳くらいの女性が「幸せってなんだろうね」と呟いた。独り言だったら面白いなと思ったがそういうわけもなく、他人のごとく彼女に目も向けずに押し黙っていた隣の女性が「なんだろうね」と応答し、その静かな会話は立ち消えになる。黙ったまま品川駅で電車から降りる二人の姿を見て、色々な想像を描いてみるが、すぐに電車は職場最寄りの駅に着いてしまい、そんなことがあったこともついの今まで忘れていた。

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仕事の昼休憩で職場の周りをぶらぶらと歩く。快晴としか言いようのない天気で、今日洗濯をすればよかったと思う。良い天気はそれだけで嬉しい。 夜、ベッドに寝転がってぼんやりと一日を振り返る。特別なことが起こったわけでもないし、道端で面白いものを見つけたわけでもない。一日はこうして忘却されてしまうのだなと思って悲しくなるが、思い返してみると今日は良い天気だった。洗濯をしようと思ったことを思い出し、僕らしからぬスピード感で洗濯の用意を整え、翌朝に洗い終わるよう予約をして眠る。 洗濯機がガタガタと立てる音で目を覚まし、眠たい目をこすりながらスマホを眺めていると、今日が雨らしいことを知る。そういえば窓から差し込む光は曇っている。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

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