少しずつ幼児期を越えていく

article

朝、コーヒーを淹れて専用の水筒に注ぎ入れ、それをちびちびと飲みながら日記を書いたり作業をしたりする。いつもよりだいぶ早く起きたので色々と進んで嬉しい。

しかしどうもおかしい。コーヒーを一口飲むたびに、ポタポタと雫になってその液体が落ちていく。幸い真っ白なTシャツを着ていたわけではなかったので大きな損害こそ出なかったが、そんなに口元が緩んでいるのかと自分の幼児性を疑ったりする。僕には見えない水の流れがワジのように連なっているのかと考えて、水筒をざっと拭いてみるも、やはり飲むたびにコーヒーがこぼれ落ちていく。

二十滴ばかりコーヒーを無駄にしてようやく気がついたのは、水筒の先にあるゴム部分が緩んでいるということ。本体とその先端の間にできた隙間が、僕の唇と水筒の設置面の手前でコーヒーを排出するようになっている。ネジを締めるようにしてそのゴム部分を水筒にくっつけると、もうコーヒーはこぼれてこない。幼児ならば気づかなかったはずの問題を解決する僕は優れて大人である。

article
ランダム記事
同僚から洗濯機を貰い受けることになったので、引っ越してから三ヶ月あまり、あとはガスコンロを購入すればこれで一通りの家具が揃ったことになる。 そういうわけで、昨日も何度目かのコインランドリーに行ったのだが、おそらくはこれが最後になる。無人の店とはいえ、どこか寂しさを感じないわけでもない。誰もいない店内で、一人衣服を放り込みながら、そんなことを考える。 いつも通り1000円の洗濯コースを選んでボタンを押すと、先にお金を入れてくださいと言われる。結局最後まで同じことを言われ続けてしまった。唯一財布に残された千円札を両替機に突っ込んで百円玉を拵え、それらを片手で掴みながら硬貨の投入口に一つずつ入れていく。十枚の百円玉を握りしめ、それらを落とすまいと掌に神経を張り巡らせるようなことは、もしかするとこの先一度もないかもしれない。 一時間が経ち、再びコインランドリーにやってくると、そこには今までみたこともないほど多くの人(といっても七、八人程度)がいる。洗濯が終わるのを待っているのか、それとも洗濯機が空くのを待っているのか。しかしそんなことはわかるはずもない。僕に内緒で引退セレモニーが企画されていたのだ。そんな妄想をしながら衣服を袋に入れていくと、薄いビニール袋が破れてしまう。僕はパンツや靴下を落とすまいと、良い匂いのするかつての汚れ物を抱え込み、一人トボトボと夜道を帰る。
山口宗忠|Yamaguchi Munetada

コメント

タイトルとURLをコピーしました